
令和5年度の国内経済は、新型コロナ感染症の5類移行に伴う社会活動の正常化が進み、緩やかな回復傾向を維持しました。一方で、およそ30年ぶりとなる3%を超える賃上げが実現したものの、物価を考慮した実質賃金は前年比で2.5%減り、2年連続で減少しました。これは、ロシアのウクライナ侵攻を発端としたコストプッシュ型の物価高騰に円安の進行による輸入価格の上昇が重なって高止まりしていることが要因です。この状態が続くと消費者の購買力が低下することが懸念されることから価格転嫁が、特に中堅・中小企業の次の賃上げへ波及する好循環を生み出せるかが課題です。他方、海外情勢は、ウクライナに中東地域を加えた地政学リスクの増大、中国経済の先行きと世界経済の下振れ懸念といった不確実な状況が続いており、これらが国内景気の下押し要因とならないかを注視していく必要があります。
働き手と人材の確保は構造的な地域課題となっています。当組合は、人材マッチング事業を強化しており、令和6年3月には4回目となる「ダイバーシティ人材のマッチング交流会」をいわき市との共催でおこないました。これは、経産省に登録された「新現役」と呼ぶ大手企業OBの専門人材と現職のままで専門的なスキルを提供する「副業人材」とを結びつけるオンライン面談会です。そこでは、外国人技能実習生の派遣事業者と就労支援事業者とのマッチングも加えて、組合員事業者に対して高度人材と働き手の不足という経営課題への解決提案を継続して実施しています。また、地域経済の持続性を高めるためには「創業・起業・新事業支援」が重要です。当組合は、平成29年からいわき市特定創業支援事業として市との共催で「創業塾」を開催しています。令和6年5月に終了した前回には50名を超える受講生が参加。その大半が起業・開業の計画をお持ちになっており、今後新たな事業が市内で立ち上がる見込みです。当組合は専門家並びに日本公庫や信用保証協会との連携を図りながら『金融と経営の一体化支援』を実践していく計画です。
当組合の経営理念は『私たちは地域で暮らすすべての人が幸福せ(しあわせ)になることを願って行動する。』です。その実現のために私たち役職員一同は、「利他心を涵養して、誠実で行動的な」活動に徹してまいります。そのために「知識と教養を身につけ、創造力を高める努力」をしてまいる所存です。
今後とも組合員の皆様には、何卒ご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
いわき信用組合 理事長 本 多 洋 八